ISBN:4396207085 新書 小野 不由美 祥伝社 2001/02 ¥930

小野 不由美 著 「黒祠の島」 ★★★

その島は風車と風鈴に溢れ,余所者には誰も本当のことを話さなかった―作家葛城志保が自宅の鍵を預け失踪した。パートナーの式部剛は,過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り,「夜叉島」という名前に行き着いた。だが,島は明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった・・・。そして,嵐の夜,神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性死体が発見されていた・・・。島民の白い目と非協力の下,浮上する因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?実力派が満を持して放つ初の本格推理!


初めて読む小野不由美作品に慣れなかったのか,それとも久しぶりに読むことになった本格推理物についていけなかったのか判然としないが,なんとも読みきるのに疲れた作品であった。

プロットとしては,閉ざされた孤島であったり,古い因習が要因にある事件であったりと,まぁありがちな設定である。しかし作家達は,その定番の設定を用いながらも「アッ!」と言わせるトリックを用意しなくてはならない。あまりにも定番であるため,使い古された安易なトリックは使えないのだ。作家も難儀なことだが,ミステリマニアの増えた昨今では,これはもう作家と読者の戦いだ。ミステリ作家は意地でも,読者に勝利し続けなくてはならい使命にある。そして私はその戦いに見事に敗れたことにはなるのだが,なんとも納得がいかないのである。気持ちよく完敗であったと素直になれないのだ。読んでる最中に,京極夏彦の「鉄鼠の檻」を思い浮かべたりしたのだが,京極ならこの設定でどのようなトリックを用いてくれたであろう?と思わせた時点で大分採点を落とさざるを得ない。また採点を低くした要因として,探偵役の華のなさがある。別に華がなくても構わないのだが,やはり一癖あるくらいが探偵として良いアジがでるのだけど,本作の探偵はまったくの常識人であり普通の人なのである。これではちっとも面白くない。やっぱり今のミステリには,ガチガチの本格にも多少のユーモアを持たせてくれないとね。ちょっといろんな意味で残念であった作品でした。

コメント

SSR

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索