ISBN:4062106566 単行本 真保 裕一 講談社 2001/05 ¥2,100

新保 裕一 著 「黄金の島」 ★★★★

「命の洗濯をしてこい。わかるな,修司。」所属する暴力団の権力抗争から幹部の恨みを買った坂口修司。バンコクへと身を潜めたが,待っていたのは謎の刺客だった。度重なる襲撃をかわし,逃げたベトナムでシクロ乗りの若者と出会う。はたして修司に安住の地などあるのか。手に汗握る迫真の国際サスペンス超大作。---文庫上巻あらすじ---
逃亡者として人生を終えなければならないのか―――。ベトナムで身を隠すヤクザの修司は,現地の若者たちと日本行きを謀る。が,汚れた警察や暗殺者が行くてを阻む。押し寄せる危機が修司たちを絶望の淵へと追い込んだ。荒れ狂う大海へと漕ぎ出した彼らの運命は・・・・・。感動のラストが待つアドベンチャー巨編---文庫下巻あらすじ---


相変わらず真面目な文章を書く作家さんです。綿密な取材活動をすることに対して賞賛をする周りをよそに,著者は「趣味でやっていることだから」と遺憾の意を示しているが,そうはいってもこの精巧な描写を前にしては,やはり其処のところに触れないわけにはいかないだろう。本作の舞台ともなっているベトナムのホーチミン市の描写も(巻頭に地図が掲載されてはいるが)脳内に3D画像が映し出されているかのような錯覚を覚える。このような筆力が誇れるのも趣味と言って憚らない取材活動による賜物であろう。

さて内容において,ベトナム人の日本に対する憧れる様が何度も書かれている。日本人として生まれた私としては,本作の主人公と同様に今の日本に対してなぜそこまでの憧れを持てるのかが良く分からなかった。だがこうやってテレビを見ながらコンポで音楽を聴き,コーヒーを片手に紫煙を燻らせてパソコンを叩いている私は,地球規模的視野におけば恵まれた環境に身をおいているのだろう。当たり前のようにこの日本で生活をし,現在の環境や自分のおかれている立場に憂いを感じているのはエゴでしかないのかもしれない。そう思うと大変身につまされる思いで一杯である。

私の仕事上のお客さんで親しくさせて頂いてる方がいるのだが,その方はベトナムで会社を興すために数年赴任をしていた。そこで,いろいろな話を聞かせてくれたのだが,日本と同じ価値観や常識を持っていては,とてもじゃないがやっていけないらしい。
ここで暴露できる類の話ではないので割愛するが,袖の下が広くまかり通っていて,それは空港で入国という厳重に管理されるべき場所においても同様なのだそうである。

私たち日本人は各々の現在がどうであれ,この日本に産まれ落ちたことに対して誇りを持つべきだ。このところアメリカかぶれのように「リスペクトする」とかいらん横文字を入れて,さもインテリを気取ってるのか,または語彙が豊富なのだとアピールするかのような芸能人や学生諸君が多いが,そんな言葉を覚えるよりも母国語をもう少し勉強してくれたまえ。恥ずかしながら宅の妹と話していても,難しい言葉を使っているわけでもないのに,いちいち言葉の意味を聞いてこられるのはホント情けない。偉そうに語ってはいるが,まだまだ私も人のことを言えた立場ではないので,よりいっそう精進する所存である。
ISBN:456203761X 単行本 乾 くるみ 原書房 2004/03 ¥1,680

乾 くるみ 著 「イニシエーション・ラブ」 ★★★★★

大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。やがてふたりはつき合うようになり,夏休み,クリスマス,学生時代の最後の年をともに過ごした。マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。週末だけの長距離恋愛になってしまい,いつしかふたりに隙間が生じていって・・・・・。


注意! かなり興奮してるので<ネタバレ>すると思います。

ぐぁっ。やられた。最後の二行を読んだ瞬間,頭が真っ白になった。はっ?辰也?誰だおまえ。わけ分からん。読んでいて何かひっかかる記述があったりはしたけど,結局きれ〜いに騙された。
この本の帯に「ぜひ,2度読まれることをお勧めします」とあるんだけど,お勧めしますとか言われなくても,読まずにはいられない。2度目を読むとまるで違った作品として読めて,この小説の凄さというか怖さというか,とにかく物凄い衝撃をうける。
前にオンナは怖いって書いたけど,このお話の中にも恐ろしいオンナがいます。オトコがこの本を読むと彼女の事を疑ってしまうかもしれない?俺達は愛し合ってるから大丈夫とか思っているそこのあなた。あなたの隣にいるのは裏表のない本物の彼女ですか?

今年最大のヒット作です。超おすすめです。絶対に読むべし!
ISBN:4061822713 新書 森 博嗣 講談社 2002/09 ¥1,029

森 博嗣 著 「赤緑黒白」 ★★★☆

深夜,マンションの駐車場で発見された死体は,全身を真っ赤にに塗装されていた。数日後保呂草は,被害者の恋人と名乗る女性から,事件の調査を依頼される。解明の糸口が掴めないまま発生した第二の事件では,色鮮やかな緑の死体が・・・・・!美しくも凄愴な連続殺人!快調Vシリーズもクライマックスの第10弾!


まず事件ね。最後なだけあって派手です。でも最後はやっぱり森ミステリ的な結末。動機なんてどうでもよろし。「殺したいから殺す」。或る意味真理であるが,やっぱり少し物足りない。まぁ森博嗣に懇切丁寧なラストを用意して欲しいとも,もう思わなくなってるので,まぁ良いのだが・・・・・。
そして,やっぱり気になるのは登場人物の進捗なんだけど,ここでもやっぱり森でした。萌絵と犀川の恋愛模様の結末に比べればまぁ読者サービスしたほうかな。
最後の最後でなにやら怪しい伏線をはってる。これって既刊済みの四季シリーズへの暗示だったのかなぁ〜?
そういえば,新シリーズが始まった。四季シリーズもまだ読んでないのだが,とりあえずゲットしといた。筆が早すぎて読んでも読んでも追いつかないなぁ。でも楽しみが尽きないので贅沢な悩みだが・・・・・。
ISBN:4167659026 文庫 横山 秀夫 文芸春秋 2002/11 ¥500

横山 秀夫 著 「動機」 ★★★

署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か,外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回に本推理作家協会賞受賞作)ほか,女子高生殺しの前科を持つ男が,匿名の殺人依頼電話に苦悩する「逆転の夏」。公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。


「まったく新しい警察小説」と評されるように,確かに設定は面白い。ただ,どの話も暗い。そして硬い。これは前にもいったが・・・・・。

■動機
ある管理官の強攻施策で警察手帳が一括管理化されたが,その一括管理されていた警察手帳三十冊が紛失して・・・・・。
またドロドロした警察内に溢れる人間関係の話かと思ったら,なんと人情味溢れるお話でした。この著者にしては珍しい結末か。

■逆転の夏
殺人を犯して服役し,仮出獄後に就職をして真面目に働く主人公のもとに殺人依頼の電話が鳴って・・・・・。
途中からどっかで聞いたことのある話だなと思ってたら,最後の最後で「あぁ,ドラマでやってたんだ」と気づいた。佐藤浩一が主人公らしいのだが,そこは全然覚えとらんかった。

■ネタ元
弱小新聞社の女性記者に大手新聞社から引き抜き話が舞いこむ。手土産としてネタ元を持っていこうとするが,それに自信がなく裏づけを取ろうとするが・・・・・。
私のいる業界は引き抜きとかはあまりないのだが,業界内での転職はかなり多い。いろいろな内部事情を聞いたりするのだが,やはり同じ業界だけあって抱えてるものは大体同じようなものだ。そういった業界全体のことよりも今いる社内での立場をどうにかしないとなぁ〜。

■密室の人
法廷中に居眠りをしてしまった判事は・・・・・。
話の中に居眠りは誰もがしてるとあるが本当なのだろうか?人の一生を左右しかねない場所においてそれはまずかろう。かく言う私も,ミーティング中やプレゼンを受けてるときに,うとうとすることもあるので,人のことはいえないのだが・・・・・。

これにて手持ちの著者作品は消化し終えた。読みたい作品が数多くあり積読本も増えていることから,よっぽどのことがない限りは著者の作品を今後読むことはないだろうな。あぁ,読書する時間がもっと欲しい。
ISBN:4396207409 新書 綾辻 行人 祥伝社 2002/06 ¥1,300

綾辻 行人 著 「霧越邸殺人事件」 ★★★★

或る晩秋,信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった・・・・・安堵の声も束の間,外界との連絡が途絶えた邸で,彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる!密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めいた住人たち。ひとり,またひとり――不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は?驚愕の結末が絶賛を浴びた超話題作。


この作品は館シリーズには組み込まれないらしいのだが,「暗黒館の殺人」が長い年月を経てようやく発売となり,いちおう館モノなので先に読んでおこうと,これまた長い間積読しておいたのを引っ張りだしてきた。

猛吹雪によって外界から隔絶された洋館。そこでひとり,またひとりと殺されていく―――。はい,本格モノの定番ですな。「国祠の島」のレビューで触れたように,半端なトリックは許されない。まぁ綾辻の事だから,その辺の心配はしていなかったのだが,ちょっと期待しすぎていたようだ。ストーリーの展開はさずがに良い。良いのだが新鮮な驚きが得られなかった。巷では本書が綾辻の最高傑作という声も多いのだが,私的には「時計館の殺人」にはるかに劣ると言わざるを得ない。採点を落とした要因は,「あれっ?これはおかしいぞ。こいつが真犯人なのでは??」と思っていたところが実際に最後の解決段階で指摘されているのだ。やっぱりミステリでは,思いもよらない結末が待っていて欲しいものだ。冒頭でも触れたが「暗黒館の殺人」が発売となった。もちろん即ゲットした。上下巻で京極夏彦の「宴の支度・宴の始末」級に長ーいのだが,非常に楽しみである。少しほとぼりを冷まし,読みたい欲求に駆られたときに貪りつくしたいと思う。ホント楽しみだ。
ISBN:406274760X 文庫 幸田 真音 講談社 2004/05 ¥470

幸田 真音 著 「eの悲劇―IT革命の光と影 ★★★☆

eビジネスで成功し時代の寵児となった男は,なぜ大銀行のビルから飛び降りようとしたのか。安値更新していた株が急騰,最新設備を誇る外資系通信会社で何が起こったか――証券会社を辞め,警備会社に再就職した中年男が直面する事件の数々。刻一刻と進化する経済社会を生き抜く人間たちを熱く描いた傑作!


著者初の連作短編集。だが,今までと同じように坦々と物語りは進んでいく。この人が書く主人公はいつも有能で切れる。今回も,今でこそ警備会社職員と落ちぶれてはいるが,元は証券会社のトップディーラーでエリート。そんな主人公の脇役として,いまでいう若者然とした元航空自衛隊が良い味を出している。別にエリートばかりが悪いとは言わないが,たまにはうだつのあがらないダメダメな人間を軸においた作品を書いてくれればいいなとも思うのである。サクセスストーリーなんかも良いかもしれない。「マネーハッキング」のような犯罪物をもう一度書いてくれるなら尚良いのだが・・・・・。今後も期待する。
ISBN:404425303X 文庫 乙一 角川書店 2002/12 ¥480

乙一 著 「さみしさの周波数」 ★★★☆

「お前ら,いつか結婚するぜ」そんな未来を予言されたのは小学生のころ。それきり僕は彼女と眼をあわせることができなくなった。しかし,やりたいことが見つからず,高校を出ても迷走するばかりの僕にとって,彼女を思う時間だけが灯火になった・・・<未来予報>。ちょっとした金を盗むため,旅館の壁に穴を開けて手を入れた男は,とんでもないものを掴んでしまう。<手を握る泥棒の物語>他2編を収録した,短編の名手・乙一の傑作集!


またまた乙一です。挿絵もすっかり気に入りました!

■未来予報 あした,晴れればいい。
読んでて,こっ恥ずかしいです。誰でも幼少時は同じような経験をしてるんだなぁ〜と思った。甘酸っぱいです。

■手を握る泥棒の物語
これが一番良かった。読み終えてから,いろいろとこの書かれていない先にはどうなるんだろと想像したくなるのが短編では良い作品である証拠。

■フィルムの中の少女
怖いよー。ただのホラーで終わらせないラストにしたのは,とっても良かったと思う。乙一らしいね。

■失われた物語
救いがなく真っ暗で悲しいお話。これだけ書き下ろしたみたいだけど,これを書くとき著者は「ブルー」だったんですかね?
ISBN:4044253021 文庫 乙一 角川書店 2001/05 ¥500

乙一 著 「きみにしか聞こえない―CALLING YOU」 ★★★

私にはケイタイがない。友達が,いないから。でも本当は憧れている。いつも友達とつながっている,幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日,とりとめなく空想をめぐらせていた,その時。美しい音が私の心に流れだした。それは世界のどこがで,私と同じさみしさを抱える少年からのSOSだった・・・・・。(「Calling You」)誰にもある一瞬の切実な想いを鮮やかに切り取る”切なさの達人”乙一。表題作のほか,2編を収録した珠玉の短編集。


また乙一です。そんで挿絵もとっても多いです。

■Calling You
携帯電話のお話。でもただの携帯電話ではない。頭の中で創造していた携帯電話が突然鳴り響き現実のものとなるのだ―――。

携帯電話ってホント皆もってるよね。学生なんかは電車の中でたえずいじってるけど,「なにをそんなに連絡とりあってるんだろ」と不思議に思う。「携帯をいじるな!」とは言わないけど,せめてボタン確認音だけは消してください。ピコピコとホントうざいです。そんな事を言う私はもうオヤジなのかしら・・・・・。

■傷―KIZ/KIDS―
なんか青いです。青いんだけど,オレにもこういう時期があったんだよなと感慨深げになる。こういった思いを忘れてはならないなと―――そう思った。

■華歌
不思議小説。何に分類すればいいんだか分からんけど,ミステリなんだろう。すっかりだまされてしまいましたから・・・・・。それもこれも挿絵の影響が大きい。挿絵もこういう使い方があるんだね。だけどズルイヨ・・・・・。
ISBN:4044253013 文庫 乙一 角川書店 2000/12 ¥580

乙一 著 「失踪HOLIDAY」 ★★★

14歳の夏休み,わたしはいなくなった―――。大金持ちの一人娘ナオはママパパとの大喧嘩のすえ,衝動的に家出!その失踪先は・・・・・となりの建物。こっそりと家族の大騒ぎを監視していたナオだったが,自体は思わぬ方向に転がって・・・・・!?心からやすらげる場所を求める果敢で無敵な女の子の物語。その他うまく生きられない「僕」とやさしい幽霊の切ない一瞬,「しあわせは子猫のかたち」を収録。きみが抱える痛みに,そっと触れます。


初です,角川スニーカー文庫。表紙がかわいらしい少女の絵なので,なんとなく恥ずかしくてネットにて購入した。表紙は裏返しにして隠せるからまだいいのだけど,中に何枚か挿絵があり,それがとっても少女チックの絵で,電車の中で読んでて覗き込まれたりすると,「いい大人がなに読んでんだよ」とか怪しげな目で見られるてるのではないかと不安になる。そんな本です。
さて中身です。

■「しあわせは子猫のかたち」
ラストがとっても良いです。癒されます。このごろ公私に忙しくてストレスの溜まる日々だったけど,こういう作品を読むととっても心が癒されます。あとネコ。ネコが良い。ネコ好きなんだと再認識した。ビバネコ!

■「失踪HOLIDAY」
したたかなオンナがいました。オンナは怖いです。たまに別の生き物のように錯覚します。会社でもオンナを敵にまわすと仕事になりません。なんとか上手くやってるつもりだけど,陰口とかたたかれてるかと思うと夜も眠れません。ウソです・・・。でもそのくらいオンナは怖いです。セクハラには気をつけよう(笑)
ISBN:4396207085 新書 小野 不由美 祥伝社 2001/02 ¥930

小野 不由美 著 「黒祠の島」 ★★★

その島は風車と風鈴に溢れ,余所者には誰も本当のことを話さなかった―作家葛城志保が自宅の鍵を預け失踪した。パートナーの式部剛は,過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り,「夜叉島」という名前に行き着いた。だが,島は明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった・・・。そして,嵐の夜,神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性死体が発見されていた・・・。島民の白い目と非協力の下,浮上する因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?実力派が満を持して放つ初の本格推理!


初めて読む小野不由美作品に慣れなかったのか,それとも久しぶりに読むことになった本格推理物についていけなかったのか判然としないが,なんとも読みきるのに疲れた作品であった。

プロットとしては,閉ざされた孤島であったり,古い因習が要因にある事件であったりと,まぁありがちな設定である。しかし作家達は,その定番の設定を用いながらも「アッ!」と言わせるトリックを用意しなくてはならない。あまりにも定番であるため,使い古された安易なトリックは使えないのだ。作家も難儀なことだが,ミステリマニアの増えた昨今では,これはもう作家と読者の戦いだ。ミステリ作家は意地でも,読者に勝利し続けなくてはならい使命にある。そして私はその戦いに見事に敗れたことにはなるのだが,なんとも納得がいかないのである。気持ちよく完敗であったと素直になれないのだ。読んでる最中に,京極夏彦の「鉄鼠の檻」を思い浮かべたりしたのだが,京極ならこの設定でどのようなトリックを用いてくれたであろう?と思わせた時点で大分採点を落とさざるを得ない。また採点を低くした要因として,探偵役の華のなさがある。別に華がなくても構わないのだが,やはり一癖あるくらいが探偵として良いアジがでるのだけど,本作の探偵はまったくの常識人であり普通の人なのである。これではちっとも面白くない。やっぱり今のミステリには,ガチガチの本格にも多少のユーモアを持たせてくれないとね。ちょっといろんな意味で残念であった作品でした。
ISBN:4061822470 新書 浦賀 和宏 講談社 2002/05 ¥735

浦賀 和宏 著 「浦賀和宏殺人事件」 ★★

ミステリ作家浦賀和宏は悩んでいた。自作のテーマは「密室」。執筆が難航するなか,浦賀ファンの女子大生が全裸惨殺死体で発見される。彼女が最後に会っていたのは浦賀和宏!?そして・・・・・その裏にはもうひとつの事件が!?驚愕の結末!永遠のテーマ「密室トリック」に挑む講談社ノベルス20周年書き下ろし!


ねぇ,これって"やっつけ仕事"でしょ?

トリックに驚きを得られたのが救いで,それまでのプロセスはホント最低です。この著者は「YMO」が好きなのだろうが,私はまったく興味がないし,このごろ良く見受けられるグロイ描写,乱暴な書きなぐりは読むに耐えないです。トリックに至るまでは★1つをとうとう出すことになるのかと思ってしまったよ。この著者は「安藤君シリーズ」が多いし,ネタに困ってるのかね?そろそろ新しい設定で,以前のような緻密な作品を期待したいところです。
ISBN:4344405048 文庫 加納 朋子 幻冬舎 2004/04 ¥600

加納 朋子 著 「ささらさや」 ★★★★

事故で夫を失ったサヤは赤ん坊のユウ坊と佐佐良の街へ移住する。そこでは不思議な事件が次々に起こる。けれど,その度に亡き夫が他人の姿を借りて助けに来るのだ。そんなサヤに,義姉がユウ坊を養子にしたいと圧力をかけてくる。そしてユウ坊が誘拐された!ゴーストの夫とサヤが永遠の別れを迎えるまでの愛しく切ない日々。連作ミステリ小説。


この方は私の好きな作家である貫井徳郎の奥さんである。
そんで,貫井が落選した「鮎川哲也賞」を受賞してたりする(笑)

そんな彼女の作品を始めて手にとってみたが,これが何とも言えず良い。女性らしい柔らかで優しいタッチがとっても軽快で,登場人物の一言一言が胸に響くのだ。主人公のサヤは新婚でユウ坊を生んだ数ヵ月後に夫を交通事故で亡くすのだが,挫けそうになりながらも周りに人たちに助けられながらひたむきに生きていくさまがなんとも涙をそそる。男ならだれもが「この女を守りたい!」って思うんではなかろうか。
ISBN:4061822527 新書 森 博嗣 講談社 2002/05 ¥882

森 博嗣 著 「朽ちる散る落ちる」 ★★★★

土井超音波研究所の地下,出入りが絶対に不可能な完全密室で,奇妙な状態の死体が発見される。一方,地球に帰還した有人衛星の乗組員全員が殺されていた。数学者小田原長治の示唆で事件の謎に迫る瀬在丸紅子は,正体不明の男たちに襲われる!前人未到の宇宙密室!ますます冴える森ミステリィ,絶好調Vシリーズ第9弾!


Vシリーズで一番良かったかも(?)。

舞台は,「六人の超音波科学者」で謎を残した場所。別にあれはあれで謎として残しておいても良かったのだが,ネタに困ったのか,まるでB面作品である。ところがどっこい,事件のスケールをでかくしたのが良かったのか,これがなかなかの出来映えであった。また森作品にしては珍しく,読後感もかなり良かった。更にいえば,森流のダジャレがツボにはまりまくった。これは私だけかもしれないが・・・・・。

とうとう残すはあと1作。S&Mシリーズのときのような肩透かしされる終わりだけは見せてくれるなよ。森センセ,頼んます。
ISBN:4167659018 文庫 横山 秀夫 文芸春秋 2001/10 ¥470

横山 秀夫 著 「陰の季節」 ★★★

警察一家の要となる人事担当の二渡真二は,天下り先ポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべもなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち,ある未解決事件が浮かび上がってきた・・・・・。「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾。


く・暗い,暗すぎる。そして,か・硬い,硬すぎるよ。

「半落ち」で有名な著者だけど,短編でこんなに読むのに疲れるようでは長編なんて読む気がしないね。

BOOK OFFで105円だったから思わず手に取ったけど,本屋さんで新品を買おうとはもう思わないな。

たった1作で判断するのもなんなんで,もう1作読んでみようかね。
ISBN:416768201X 文庫 貫井 徳郎 文芸春秋 2004/05 ¥620

貫井 徳郎 著 「神のふたつの貌」 ★★★★☆

―――神の声が聞きたい。牧師の息子生まれ,一途に神の存在を求める少年・早乙女。彼が歩む神へと至る道は,同時におのれの手を血に染める殺人者への道だった。三幕の殺人劇の結末で明かされる驚愕の真相とは?巧妙な仕掛けを駆使し,"神への沈黙"という壮大なテーマに挑んだ,21世紀の「罪と罰」。


また貫井に,や ら れ た。

思わず「マジかよっ」って声に出して言ってしまった。
そのくらい見事に騙された。ホント毎回バカみたいに・・・。

トリックとしてはお得意である叙述トリック。内容はキリスト教と宗教を題材としてるので暗めであるが,登場人物の各々に内包された心の裡を除くにつれ,なんとも形容しがたい世界に没頭させられる。

本書の帯に,「『慟哭』を凌ぐ最高傑作」とあったが,その形容も素直に頷ける素晴らしい作品であり,コンスタントに秀作を発表する著者にホント感謝したい。あっぱれ!
ISBN:4093861307 単行本 松岡 圭祐 小学館 2003/11 ¥1,680

松岡 圭祐 著 「千里眼の死角」 ★★★☆

世界各地で原因不明の「人体発火」現象が多発。英国王室のシンシア妃は何故かこの事件報道に極度に敏感な反応を示し,バッキンガム宮殿に引き篭もる。王妃の精神状態を探るため,臨床心理士の嵯峨敏也が宮殿に招かれた。その事件の陰に存在していたのは,全人類の歴史を覆す恐怖の策略だった。嵯峨は旧知の元航空自衛隊F15パイロット・岬美由紀に協力を求める。死地へと踏み込んだ美由紀は,予想しえなかった戦慄の事態に直面する・・・・・。遂に宿敵メフィスト・コンサルティングと決着。<ミドリの猿>から<ダビデ>まで,すべての謎が一挙に解き明かされる。催眠・千里眼シリーズの第10巻特別記念作。


今までにも増して設定がものすごいです。
コンピューターが意識を宿す。まるで映画の「ターミネーター」だ。まだ人間の支配下における上での意識なので人間に反逆するわけではないんだが。今のテクノロジー進歩をみると,この小説で書かれている程度のことは,そのうち現実となってもおかしくない気がするので,すべてをSFを片付けてしまうのは乱暴かもしれない。

それと,「福井晴敏」のレビューでも同じようなことを書いたんだけど,うざい固有名詞はホントいらないです。作者自身がベンツに乗っていて好きなのは分かるけど,いちいち車の性能やら正式品名なぞは書いてくれるな。
ISBN:4061823493 新書 高田 崇史 講談社 2004/01 ¥924

高田 崇史 著 「QED 竜馬暗殺」 ★★





坂本竜馬がって言うよりも,幕末時代に興味がないのだということを再認識させてくれた本でした。

内容も事件自体がまったくのおざなりになっており,竜馬暗殺についての学術書かのようになってしまっている。

ただでさえ興味のない時代背景に,小説としても面白みをそがれてしまっては,読むのもほぼ義務感としてでしかない。

このQEDシリーズで2作前にも「シャーロック・ホームズ」が題材であったが,薀蓄を披露する類の小説は,自分の趣味と合致していないとダメなんであろうな。

それでも京極夏彦の京極堂シリーズにおける薀蓄には,興味がないものでも逆にもっと知りたいという欲求にかられるのだから,薀蓄を披露するにも,披露の仕方というか筆力によるものが大きいのだと思う。

今作では棚旗奈々の妹で沙織というキャラが台頭していたので,他にももう少しキャラを増やし現代の描写に力を入れてほしいところである。

採点は今後の期待もこめて辛めの2点としておく。
ISBN:4087474399 文庫 東野 圭吾 集英社 2002/05 ¥1,050

東野 圭吾 著 「白夜行」 ★★★★





やっぱり読む前に情報収集するのは止めたほうがよいね。

「後味が悪い」っていう書評が多いのを承知の上で読んだんだけど,読み終えてみると,おんなじ感想を抱いちゃいました。

お話としては,ホント面白い。幸田真音の「マネーハッキング」と,真保裕一の「奪取」に似たような感じがした。

ただ,残り数ページという段階になっても,全然まとまる雰囲気がないまま,なんだか強引に打ち切られたような終わりかた。
そこが前述した作品達と違う点で,採点の評価に影響した。

実は「幻夜」もすでに手元にあるんだよね。あまり間を空けずに読むべきか,それともほとぼりが冷めるのを待つべきか思案中である。
ISBN:4062735067 文庫 井上 夢人 講談社 2002/08 ¥800

井上 夢人 著 「メドゥサ,鏡をごらん」 ★★★





「なんだこれ?」

これが読み終わったときの正直な感想だ。

途中から文字のフォントが変わったりし,相変わらずの文章センスも光っており,グイグイと引き込まされていくのだが,突然この小説は終わってしまう。

おいっ,ちょっと待て。答えはどうした?

いくら考えても良く分からない。私の読解力が足りないのか?
それとも回答を読者に委ねる作品なのか?

前者であったら自分の読解力のなさに反省をするところだが,もし後者であったならば,私の嗜好には反する。

「ダレカガナカニイル・・・」も似たような結末を迎えたが,それなりに答えを用意してあったので満足したのだが・・・

今回は後者であると判断して,星は3つとさせていただきたい。
だたし,内容的には星4つはあげられることを補足しておく。
ISBN:4061822314 新書 森 博嗣 講談社 2002/01 ¥735

森 博嗣 著 「捩れ屋敷の利純」  ★★★☆





Vシリーズの8作目。

なんとS&Mシリーズの萌絵が登場!

別に萌絵が萌え!って感じじゃないんだけど,この特異なキャラがでてくると,作品に華がでてくるね。

お話がどうかというと,・・・ってな感じ。

なんだか煮詰まってるような,そんな気がするこのごろです。

Vシリーズもあと2作。どうにか頑張って上手く纏めてほしいもんです。

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